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和光出荷組合は、埼玉県南部の和光市にある。東京の練馬区や板橋区と隣接する住宅地の一角で、開発の波にもまれながらも、祖父の代からの農地を守り、特産の野菜を作り続ける生産者の一人、加藤政利さん。同組合代表の加藤明良さんが、「かぶなら政利さん」と推す、かぶ作りの名人である。「大根、小松莱に今年から水莱も作り始めたけど、やっぱりかぶの魅力には敵わないな」と、その味作りの秘訣を明かしてくれた。

  
  「りんごの味」か、「メロンの味か」

かぶ、大根、白菜……。白い色の野菜は冬が旬と思い込んできた。しかし、市場を見回すと、品種改良や施設栽培の普及で、さまざまな農産物が通年出回り、野菜で季節を感じることは少なくなった。和光市にある加藤政利さんの畑では、夏のかぶが終わり、秋の旬に先駆けて9月いっぱい収穫できるかぶが、青々とした実を繁らせていた。
「ここだけポッカリ開いた空間っていう感じでしょ。周辺の宅地開発が昭和40年代から始まって、加速度的に広がっていきました。養豚業も何軒かあったんですけどね」
と、加藤さんは、戸建てやマンションにぐるりと囲まれた80aの畑を指差した。
畑の真ん中、好位置に10a余のかぶの畝が並ぶ。綱目0.7mの虫除けネットをトンネル状にかぶせた生育中のものもある。勢いよく繁った葉の根元近くには、土からほっこりと、白い歯並びのように、かぶが顔をのぞかせていた。加藤さんは数本抜くと、みかんの皮をむくように、かぶの皮を指先でむいて差し出す。
「明日、出荷するかぶです。味見してみませんか」
真っ白な玉(根)をかじると、弾けるようなみずみずしさと柿にも似たフルーティな風味が、たちまち口いっぱいに広がる。
「リンゴの味と表現した人もいましたけど、メロンの味と言ってもらえると最高にうれしいんですけどね」
加藤さんの日焼けした顔がほころんだ。味見したのは、「YRくらま」という品種である。
「10月半ばから12月にかけてが、かぶの本番です。その時期に出荷するのが『玉里』という品種。ほかのものより断然甘くて味がよく、玉の肌がきれいなんです。日持ちもいいので、配達されてからも採り立てと同じおいしさを味わってもらえます。ぜひ生で食べてみてほしいな」

    失敗を重ねたかぶ作り

かぶは高温乾燥が続くと、丸い形がいびつになる。もっと乾燥がひどい時は、土中に根が長く伸びてしまうという。そうして自衛するので、味は変わらないのだが、見た目が悪いと嘆く。
「乾燥に強い『玉里』はその点、つくりやすいんです。それでも、作り始めて十数年、玉の形、味、菓のバランスが理想どおりになって、すべてに満足いったのは、2回くらいしかないですよ。そんなときは、飾っときたかったですね。娘をもった親の気持ち」
加藤さんは、農業高校を卒業後、まず自分の他の土の特質を知ろうと独学で土壌の勉強を続けた。
「何十年も大根を作り続けてきたので、連作障害が出てましてね。何が原因なのか、必死に勉強しました」
その結果、微生物農法に切り替え、連作障害が出にくいという理由から、かぶの栽培を始めた。しかし、最初の頃は失敗も重ねたと、当時の心境を思い起こして語る。
「トラクターで畑に収穫できないかぶを埋め戻すときの悔しさ、かわいそうで辛いよね。でも、近所の人のやり方を見て、あんまり入れ込みすぎてもいけないんだなと気づいてからは、肩のカが抜けました。そしたらよくなりましたよ」

  首都圏でも循環型農業

加藤さんの自慢の有機肥料は、30年来、使い続けている牛糞堆肥である。これがかぶの味をよくする秘訣であり、作物に甘みが出るとカを込める。
「30年前にぶどうを作ったときは、この牛糞堆肥のおかげで甘みが優れていました。作物によってね、撒き方を変えますよ。長ねぎは根元に入れて土寄せするし、かぶの場合は畑全体に撒くというようにね」
この優れものの堆肥の入手先は、加藤さんの畑に隣接する牧場。牛糞とおが屑を混ぜて発酵させ、何回も切り返して熟成させたものを譲り受けている。黒々とした堆肥を手に取るとさらさらしていて、ほのかな温もりがあった。
「隣が牧場というのは最高の環境ですね。首都圏にありながら、循環型農業の実践もできるんですから」
現在、加藤家は三世代7人家族で暮らす。両覿と妻の順子(よりこ)さん、長男・博明さんの5人で畑仕事に勤(いそ)しむ。
この地で何十年も、農業の様変わりを見てきた父の敏典さんは73歳。
「春先には苗床にワラを踏み込んで土の温度を上げたり、農家は昔からいろんな工夫をしてましたよ。収穫時期がどんどん早くなっていくから、遅れないようにとね。今は、ほうれん草だって一代交配のものになったしね」
加藤さんも、最近の野菜の消費傾向について、複雑な心境だ。
「品種改良が進んで、ミニサイズでもおいしいものが出回っていますけどね。ほんとは大根だってかぶだだって、よく育った大きいもののほうがおいしいんですよ」
最近、かぶ作りにかけては、気持ちにゆとりが出てきたと語る加藤さん。
「一番楽しいのは、収穫したかぶを洗ってみてキレイに仕上がっていたとき。今年は初めて水菜を植えたし、来年は、赤ねぎを植えてみようかと思っているんですよ」      

提携生産者の素顔

 

2003年3月、生活クラブ東京と提携する野菜の地場生産者9団体が集まり、農(みのり)安心ネットワークを発足させた。事務局を務める生活クラブ東京の富沢さんは、設立の経緯をこう話す。
「都市農家と提携を進めて30年。最近では、−般にも都市の農地は、新鮮で安心な野菜の供給地としてその価値が見直されるようになり、スーパーや小売店も積極的に取組むようになりました。また、生活クラブでも戸別配送が増えるなど組合員のライフスタイルも変化してきたところで、改めて生産者、組合員が−緒に提携する意味を再検討する場が求められてきました。そこで都市農家が協同して生産者事務局をおくことになりました」
今年度の活動として、会員の研修、交流や種子農法推進チームの実験圃場設置などが計画されている。
参加団体の一つ、和光出荷組合の加藤政利さんは、80aの畑地に6品目を栽培する。「地場の産地のいいところは、消責者のすぐ近くにあって、いつでも訪れることができること。でも、最近は組合員の畑見学も少なくなりましたね。うちの畑には、農業大学校の学生たちがよく見に来ますよ。これからは、首都圏の地場生産者の圃場見学ツアーなどの企画を通して、交流の機会も増えていくことでしょう」と、今後の活動に期待を寄せる。
  消費材の特徴
栄養価はどタミンC、デンフン分解酵素ジアスターゼを含むなど、大根に近い。葉は根よりビタミンCが多く、力ロチン、カルシウム、食物繊維も豊富なので、余すところなく利用できる。肌のきめが細かく、つやのあるものが新鮮さの証しである。「ぬか漬け、浅黄けもおいしいですけど、うちでは、切ってから塩で軽くもんで、昆布しょう油で食べたりします。サラダにするときも少し厚めに切るほうが、かぶの風味があっておいしいですね」(加藤政利さん)

かぶの甘みと食感を味わうスープ煮
かぶのスープ煮

【材料…4人分】
かぶ…6個、スライスベーコン…4枚、顆粒洋風だレ‥大さじ3、こしょう…少々、かぶの葉や水菜など…適宜
【作り方】

  1. かぶは皮をむいて6〜8等分のくし切りにする。スライスベーコンは適当な大 きさに切る。
  2. 鍋に水4カップと顆粒洋風だし、《1》を入れ、4−5分ほど煮てこしょうをふる。
  3. 器に盛り付け、砂でたかぶの葉または水薬など青みの野菜を添える。

かぶの挽き肉あんかけ
【材料…4人分】
かぶ‥8個、豚ひき肉…100g、顆粒洋風だし‥大さじ2、しょう油、みりん、酒…各大さじ1、水溶き片栗粉・砂糖…適量、かぶの葉や木菜など…適宜
【作り方】

  1. かぶは葉を切り落としたほうに、軽く十文字に包丁目を入れる。
  2. 鍋にかぶを入れてひたひたの水を注ぎ、顆粒洋風だし、しょう油、みりん、酒を加え、かぶが柔らかくなるまで12〜15分ほど煮て、器に取り出す。
  3. 《2》の鍋にひき肉をほぐすように入れて火を通し、隠し味に砂糖を加えてひと煮立ちさせ、仕上げに水溶き片栗粉を回し入れてとろみをつける。
  4. 《2》のかぶに《3》のあんをかけ、青みの野菜を添える。

編集ワーカーズのもの・桜木幸子   写真・武田泰樹