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 生活クラブでは1977年以来、毎春、甘夏みかんを取組む。産地は熊本県水俣市を中心とする不知火海(しらぬいかい)周辺の地域である。海岸線に沿って連なる小高い山々には、朝陽を浴びた甘夏みかんが金色に輝く。女島(めじま)地区の緒方くに子さんは、「夏の長雨の影響を心配しましたが、秋には暖かい日が続き、玉伸びもよく、いい出来です。あとは糖度が増すのを待つぱかり。楽しみです」と、収穫への期待に声を弾ませた。

  

 水俣病と甘夏みかん

 甘夏みかんで提携する「生産者グループきばる」の生産者の多くは、かつて不知火海の漁民であり、水俣病を発症した患者の家族でもある。
  女島地区の緒方くに子さんもその一人。21歳で網元の長男と結婚、陸に上がった夫とともに、甘夏みかん作りに27年の経験を積む。
  「もともとこの辺りは、半農半漁の暮らしでした。父が早く亡くなり、結婚当時、市場では甘夏の単価が高く、収入が安定すると思ったので、自分の代で専業農家に転じました」
  そう語るのは夫の緒方茂実さん。きばるの副会長と事務局長を兼任し、長年、生活クラブ組合員と交流を深めてきた生産者の一人である。
  緒方さんのみかん山を訪れたのは12月中旬。西方に天草諸島を望み、大小の島々が点在する眼下の不知火海は、海特有の穏やかな表情を見せていた。しかし山を切り拓いた!園地は、立っているのがやっと、一歩踏み外せばそのまま海へと転がり落ちるかと思うほどの急斜面である。
  そんな傾斜地での草刈り、肥料やり、摘果、農薬散布、収穫と続く農作業の困難さは、想像に難くない。
  しかし、くに子さんは「ここはうちの畑の中でも緩やかなほう」と笑いながら、樹上の実を一つ、長ばさみで摘んだ。「ほら、サビダニにやられている」。その目敏さに驚かされたが、確かにサビ色の細かな斑点がシミのように果皮を覆っている。
  「果実を腐らせるサビダニは越冬害虫です。ここ数年、暖冬のせいで被害が広がっている。発生したら見つけ次第摘果するしかないので、今年から予防のための農薬散布を決め、農産物規格書にも記載しました」(茂実さん)

    農薬は慣行農法の3分の1

 しかし昨夏、防除に使用した農薬をめぐつて問題が発生した。生活クラブ連合会開発部農産課の斎藤康之さんは、その経緯をこう説明する。
  「残留農薬検査で防除暦記載欄にない農薬成分を検出、外皮に国の基準の10分の1以上の残留と報告されました。調査の結果、使用者は2名、8月以降は散布していないので、食べても害はないと判断しました。組合員との今回の訪問は、組合員の信頼を損なったことについて、仕切り直しのための話し合いでした」
  水俣病患者家庭を中心に、「自らが加害者にならない」という意志できばるに参加している生産者の間にも、今回の波紋は大きい。
  御所浦地区の森通夫さんは、苦しい胸のうちをこう打ち明ける。
  「農薬を使うのは、ほんとはいけんとです。甘夏みかん栽培の原点を思うと残念でなりません」
  ともあれ、5年前まで地元農協に出荷していた森英明さんは、減農薬で栽培するきばるのメリットを、生産者の立場から「体がラクになった」と話す。
  「農薬を洛びないように全身を合羽(かっぱ)で覆うので、夏の炎天下に半日撒くと、長靴の底に5cmほども汗がたまるとですよ。それを16〜20回、散布するように指導されてたとです。だから、見た目はきれい。そのために大変な作業をするわけですよ。収穫後にワックスがけするので、農薬は落ちちゃうというとですけどね」
  地元で行われている慣行農法について、きばる事務局の高橋昇さんは、こう補足する。
  「通常、1日4000リットルの農薬を8〜9時間かけて散布するんです。今は急性中毒になるような強い毒性はありませんが、毒は毒。みかん山全体に撒くわけですから、地面に浸透して河口まで達しますよ」
  一方、きばるでは、慣行農法の散布回数の3分の1、原則7月末までに5回を上限とし、果皮に農薬が残留しないよう配慮してきた。
  だが、減農薬に切り替えた生産者が負うリスクについて、くに子さんは「規格外がたくさん出るということです」ときっぱり一言に込める。
  つまり、8月以降は化学合成農薬を一切使わないので、病害虫が発生すれば手作業で摘果、収穫後も大きさ、果皮のキズや黒点の多さなどが理由となって出荷できないものが多数あるというのだ。実際、くに子さんのところも、収穫量の4分の1に当たる12tの規格外を出すという。

「頭が痛くなる」こととは

作業の始まりは1月。
「3月までは、天気がよければ『みかんちぎり』。雨が降れば倉庫で選別作業に明け暮れます」
  くに子さんが「みかんちぎり」と呼ぶ収穫作業は、71歳になる茂実さんの母が手伝ってくれる。
  「ぎっつくり腰を2回したので、20kgのコンテナは私にはムリ。16.5kgを母と二人で持つんですよ」
  「みかんちぎり」もさることながら、この時期、一番大変なのは、生産者が各自でする選別と箱詰めと、くに子さんは言う。
  「男の人がやると『頭が痛くなる』といいますよ。大きさ、黒点やヨゴレの程度を瞬間的に見分け、均等になるように手早く詰めていく器用さが求められますから」
  「頭が痛くなる」という理由には、こんな事情も加わるようだ。
  「夫が詰めると、どうしてもいいものばかり先に選んでしまうので小玉やヨゴレの多いものが残ってしまって。でも自分の名前を入れて届けるので、点検は厳しいですね。見落としじゃない場合もあるんですが、『ダメッ』と言われれば『ごめんね』と謝ります。私の責任なのに、クレームがくると夫に気の毒ですから」

  

提携生産者の素顔

 
生産者グループきばるは、有機質肥料施肥、低農薬栽培の甘夏みかんをつくり続けるクルーフである。現在、水俣市を中心に不知火海周辺に5地区32人の生産者で構成する。生活クラブでは趣旨に賛同して26年前に提携、農法を話し合いながら皮まで安心して食べられる甘夏みかんを取組んでいる。
  市販の甘夏みかんは、見栄え重視の市場に対応するため、農薬散布の回数が多く期間も長い。そのうえ、流通するのが4月なので、1月に収穫してから長期保存しておかなければならない。そのために「収穫前に防腐剤とヘタ葉ち防止剤を散布し、出荷の際はワックスをかけます。きばるでは、一切しません」(きばる事務局の高橋昇さん)。生活クラブが2月、3月に甘夏みかんを取組む理由はそこにある。
  しかし、1983年のピーク時には500tを超えた生活クラブの取組み量も年々減少し、ここ数年は250t。その計画数を達成するために、02年は4月に入っても食べられるように方策をとったのが「木成り」である。  
「収穫後に防腐剤やヘタ落ち防止剤を使わないので、収穫するまで木に成らせておくんです。玉が大きくなって酸味もなくなるのが食味の特徴。木に負担がかかるので、木成りにする木は替えて栽培します」(緒方茂実副会長)
  消費材の特徴
 有機質100%のきばる独自の肥料を使い、減農薬農法で栽培しているので、安心して皮まで食べられる。市販の甘夏みかんに比べて長くは保存できないが、配達後は、風通しのよい冷暗所で1カ月くらい保管できる。またマーマレードやビールなどに加工して貯蔵すれば、年間を通して利用できる。加工後は冷凍保存もきく。

さわやかな酸味と香りを満喫するサラダとデザート

【材料…4人分】
甘夏みかん‥2個、セロリ…1本、ラデイッシュ…5個、紫タマネギ…1/2個、水菜…3枚、エコシユリンプ‥8尾、はたて…4個、小麦粉‥少々、ニンニク…2かけ、オリーブオイル…適量、ドレッシング=白ワイン…20cc、食酢…40cc、オ
リーブオイル…100cc、塩・コショウ…少々
【作り方】

  1. 甘夏は皮をむいて袋から身を取り出す。セロリ、ラデイッシュは小口から薄切りにする。紫タマネギは薄切りにし、水にさらして水気を切る。
  2. エコシェリンプは尾を残して皮をむき、背わたを取る。
  3. <2>とほたてに塩・コショウをし、薄く小麦粉をまぶす。
  4. フライパンにオリーブオイルを温め、たたいてつぶしたニンニクを温め、香りが出てきたら<3>を入れて再面を焼く。
  5. ボウルの中に<1>と<4>を入れ、水菜を食べやすい大きさに手でちぎって混ぜ合わせ、ドレッシングで和えて器に盛りつける。


*あればイタリアンパセリ、タイムなど生のハーブ類を添える。

【材料…6個分】
甘夏みかんの果汁…200cc(約2個分)、卵白…2個分、生クリーム…150cc、砂糖…70〜80g、ゼラチン‥5g
【作り方】

  1. 鍋に甘夏易かんの果汁と砂糖を入れて煮立て、火を止める。40℃くらいに冷めてから、ゼラチンを振り入れて混ぜる。
  2. ボウルに卵白、砂糖大さじ1(分量外)を入れて固くなるまで泡立てる。
  3. 例のボウルに生クリームを8分くらいに泡立てる。
  4. <1>に<2>を2回に分けて木ベラなどで混ぜながら入れ、さらに<3>を少しずつ入れながら混ぜる。
  5. ゼリー型や甘夏の皮をカップ代わりにして<4>を流し入れ、冷蔵庫で冷やす。

*甘夏の実、あればピールやマーマレード、ミントの葉などを添える。

編集ワーカーズのもの・桜木幸子   写真・武田泰樹