ごみ問題に尽力 沼津の故井手氏
市民派市長の足跡 本に 「反骨の思想伝えたい」

全国に先駆けて家庭ごみの分別収集に取り組み、住民・自然保護運動など多方面で活躍した元沼津市長.井手敏彦さんが亡くなって、8日で2年。井手さんをしのぶ遺稿集「地域を変える市民自治」
(緑風出版)が4日に出版される。地域に根ざして住民と行動を共にした足跡を振り返り、「市民自治の実現」と「地域主権」を訴え続けた「反骨の思想」が伝わる。
(佐藤清孝)
論文・コラム…刊行会が遺稿選集
他界直後から、親交があった人たちが追悼集の出版を発案。昨年春に約10人で「井手敏彦選集刊行会」
を発足させた。井手さんの著書をはじめ、市民活動の冊子やパンフレット類に掲載された論文、地元新聞のコラムなど総ざらいして、テーマごとにまとめた。
各章は(1)ごみとリサイクル(2)公害反対と様々な環境保全運動(3)戦争と平和にこだわって(4)文化と暮らし(5)地域と自治で、最終章に、市民運動の機関誌につづった「私の人生譜」を掲載した。
特に、「地域と自治」からは「地域主権」を唱え続けた井手さんの骨っぽさが伝わる。雑誌のインタビュー(91年)で市長時代を振り返り、
「職員に絶対に本省という言葉を使ってはいかんと、お前さんたちは国とも県とも対等なんだ、という意識を育てることに苦労した」。さらに、「本省意識にとらわれていては分別収集は生まれない」と力説している。
刊行会代表の赤堀ひろ子さんは、井手さんの後を継いで10年前から生活クラブ生協静岡の理事長を務めている。
「遺稿集には、現代の課題の解決につながり、啓発できるテーマを選んだ。中央志向が強い中で、住民こそが主権者だとの井手さんの思いをくみ取ってほしい」と呼びかけている。
出版記念の講演会が4日午後1時半、沼津市立図書館である。熊本一規・明治学院大教授や河野栄次・生活クラブ連合会会長が話す。
無料。
「地域を変える市民自治」は1500部発行。1900円(税別)問い合わせは選集刊行会(055-923-4828)へ。
■写真説明:井手元市長の遺稿選集を手にする刊行会代表の赤堀ひろ子さん=沼津市内で
井手さんの略歴
1919年、東京で医師の長男に生まれ、5歳で沼津に移った。東大法学部卒業後、工作機械会社に勤め、労働組合運動に没頭。人員整理反対闘争に敗れて解雇された。
1959年から沼津市議を努め、石油コンビナート進出計画反対運動を指導。「この戦いの経験がその後の活動の原点となった」
(「私の人生譜」)市議4期目半ばの73年、市長選に当選。初の革新市長になった。75年から家庭ごみの分別回収を始め、不燃物を分別収集して資源化を実践。「沼津方式」として全国の注目を集めた。
市長2期目の78年に市政混乱の責任をとって辞任した後も、こも問題の講師として各地を飛び回り、全国自然保護連合や生活クラブ生協静岡の理事長として幅広く活動。04年に84歳で死去した。
■写真説明:初の革新市長として執務する井手さん=「地域を変える市民自治」から