食の安全をきちんと考えよう
消費者の日々の関心が、安全で安心な食を作り出すのです
それでも輸入物を食べますか? by白井和宏 牛は何を食べたらいいのか?
昨年12月に米国産牛肉の輸入が再開されてからわずか1カ月で、また輸入禁止。早くも再再開に向けて交渉が始まっていますが、ちょ〜っと待っていただきたい。その前に議論すべき根本的な問題があるはず。私はあまりに腹が立って腹が立って、腹がすいてしかたありません。牛丼、何杯だって食べられそうです。
1杯目。食品安全委員会プリオン専門調査会の多くの委員が反対していたのに、どうして官僚のシナリオどおり輸入再開に決着したのか。官僚に「賛成か反対かなんて、聞いてません。BSE感染牛が含まれる可能性を諮問したんです!」と委員会は問い詰められて、「え〜と、高いか低いかと聞かれれば、低いです……」と答えさせられちゃったわけで、これじゃあ、まるで「笑点の大喜利」。「木久ちゃん!お題を無視しちゃいけませんよ。山田君、座布団、取っちゃいなさい!」
そもそも何を目的に食品安全基本法が制定され、食品安全委員会が設置されたのか。日本でのBSE発生とそれに続く一連の食品偽装事件を契機に「事業者中心の行政から、消費者中心の行政へ」の転換が課題とされました。食品の安全性にかかわる政策判断を、官僚ではなく、客観的な委員会に委任することが目的だったはずです。
ところがモデルとなった欧州食品安全庁や英国食品基準庁と比べると、食品安全委員会の独立性が確保されていないうえに、メンバーに消費者代表はゼロ。事務局は農水省と厚労省の寄り合い所帯。しかも、ある委員は米国食肉輸出連合会が作った米国産牛肉の安全性を訴えるパンフレットを監修していました。
2杯目。米国産牛肉は不安という声はあっても、国産牛肉の価値を見直すべき、食料自給力を高めるべし、という意見が聞こえてきません。しかし米国に対して、全頭検査を行え、月齢を把握しろ、危険部位を的確に除去しろ、という具体的な要求ができたのは、日本でこの間、実施してきた対策が裏付けとしてあるからです。いくら米国が「科学的」な理由を言い張ったところで、ホントはカネがかかり、面倒だから対策を講じないのだと見抜けるのも、国内でのBSE対策の経験ゆえです。
米国産でなくても豪州産があるからOKという方々がいますが、米と豪はグルです。WTO農業交渉でも、タッグを組んで日本に市場開放を迫り、おかげで日本の畜産は衰退の一途。40万戸を超えていた酪農家はいまや3万戸を切り、消滅の瀬戸際にあります。霜降り和牛の生産も、何年も前から米・豪で始まっています。
米・豪コンビの楽しそうな声が聞こえます。
「豪:見ちゃんドジだな〜。検査しないで輸出しちゃって」「米:大丈夫、大丈夫。そのうち、鳥インフルエンザでも大発生すれば『牛肉より怖い鶏肉!』なんて大騒ぎして、輸入再開してくれって言ってくるさ」
「豪:日本の消費者は忘れっぼいからねへ」「米:コイズミのおかげで日本の農水省は、JA全農に子会社合わせて5000人の人員削減を命令し、解体を進めてくれてっからよ。日本の農業も酪農も、もうすぐ終わりさ」「豪:そしたら日本は、全部おイラたちのもんだね〜!」
まだまだいけます3杯目。米国産牛肉の危険性は、実はBSEだけではありません。EUでは禁輸を続けているウシ成長ホルモンを、日本はなぜ、問題にしないのか。4杯目。遺伝子組み換え飼料。5杯目。抗生物質耐性菌‥‥‥。
う〜ん、いくら何でももう食べられません。牛丼、嫌いになりそう。国産が消滅した後は、危険だろうが何だろうが、輸入物を食べなければならないという現実に、いつ日本の消費者は気がつくのでしょうか?
白井和宏:生活クラブ・スピリッツ専務取締役。1988〜90年に英図産牛肉を大量に掃取。ブラッドフォード大学大学院ヨーロ ビアン・スタディズ修士課程修了。BSEは未発症だが‥